2020年04月19日

IFA

 投資についてはIFAに相談するのも一法、という新聞記事があった。
 IFAは顧客の資産運用を扱う業務で、米国などでは普通に見られる業種のようだが、調べると、「金融商品仲介業者はIFA(Independent Financial Adviser=独立系ファイナンシャル・アドバイザー)とも呼ばれています。」とするサイトがあった(https://www.toushin.com/faq/other-faq/ifa/)。
 金融商品取引法2条11項に、「金融商品仲介業」とは、金融商品取引業者・・・又は登録金融機関・・・の委託を受けて、有価証券の売買の媒介はじめ同項に列挙された4類型の行為のいずれかを当該金融商品取引業者又は登録金融機関のために行う業務とある。
 「金融商品取引業者・・・のために行う業務」とあることから、収入は金融商品取引業者等(証券会社など)からの業務委託報酬が大きいと思われ、すると、委託料依存度が高いほど独立性が薄くなることはないのだろうか。「独立系」ファイナンシャル・アドバイザーという名称が多少気にはなる。IFAとのパートナーづくりに力を入れている証券会社もあるというサイトもあった(https://mon-ja.net/191122-01_ifa-attention-point/)。
 独立性は、どこの証券会社・金融機関等にも属さないという点による「中立性」と受託報酬との兼ね合いにより異なってくると思われる。
 複数の保険会社の商品を扱う業態(乗合代理店)があるが、その金融商品版のようでもある。
 金融商品取引業には「投資助言・代理業」というのもある(金融商品取引法28条3項)。こちらも代理業務による収入依存度が高いほど、独立性・中立性が気になるところだが、投資助言・代理業と金融商品仲介業の違いについて、「金融商品仲介業は、販売者である証券会社などの金融機関が得る販売手数料や信託報酬を収益源としているのに対し、投資助言・代理業は、あくまでお客様からのコンサル料(助言報酬)をその収益源としています。従って、投資助言・代理業は、コンサルティング(中立的な相談)とセールス(販売)という相異なる立場から生じる「利益相反」が、起こりにくい業態」というサイトがあった(https://www.ifa-japan.co.jp/about/%E6%8A%95%E8%B3%87%E5%8A%A9%E8%A8%80%E3%83%BB%E4%BB%A3%E7%90%86%E6%A5%AD%E8%80%85%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/)。
  いずれにせよ、投資判断は自分で行い責任は自分に帰するのであり、人のせいにしてはいけないことに変わりはない。  


Posted by 青山拓水 at 21:57Comments(0)FP

2020年04月18日

貸付金と給付金

 投資信託に元本払戻金というのがある。昔は特別分配金と言われていた。自分の出したお金を受け取るのだから、基準価格(資産価値)が下がっていく。購入時に払った手数料や、毎日毎日払っている信託報酬を考えると、投資額を取り戻すというにとどまらず、損失である。まるで蛸足配当。
 今回のコロナ禍で手続きが進んでいる給付金は収入の少ない世帯に対する30万円から全員に対する10万円になったようだが、財源は国債、すなわち借金である。借金の返済原資は税金、すなわち我々の財布である。投資の損失は自己責任とでも言えるが、どうやら給付金の方は支払原資や支払責任者は誰であるか、という点に言及する声は微かだ。
 2009年の定額給付金について、Wikipediaを見ると、当時首相だった麻生氏はこの4月の記者会見で、この定額給付金について「失敗だったとつくづく反省している」と述べた・・・とあり、確か私も最近、日経か中日かで読んだ記憶がある。
 投資信託の元本払戻金は先に払った投資金の払い戻しだが、国債が財源の給付金は、それを受け取った後に払うことになっているので、順序が逆なだけである。それも利息をつけてである。だから損失という点で同じである。給付金という名目でお金を受け取ってもその額を超えて払う、つまり返済するのだ。自分が借金してお金を受け取るなら貸付金、なのに給付金という。詐欺ではないかと言いたくなる。
 30万円なら4兆円、10万円だと12兆円という。気が遠くなる。これに利息が加わる。
 税金には所得再分配機能があるというが、消費税は逆進。東北大震災の復興費用は復興特別税という増税で賄われている。今回のお金もいずれ増税の話が出てはこないだろうか。
 仕組みの分からないものには手を出すな、というのが投資の鉄則。給付金の仕組みについても、きちんと伝えるのが国会や報道機関の務めではないだろうか。  


Posted by 青山拓水 at 18:39Comments(0)ひねもす

2020年04月08日

健保・厚年の被保険者要件の整理9(健康保険の任意継続被保険者3)

 任意継続保険料の納付遅延を防ぐ方法の一つとして、保険料の前納がある(健保法165条)。退職金をもらっていていて当分再就職の見込みがなければ、財布の余裕のあるうちに前納すれば一安心だ。退職すると在職中は毎月されていた住民税の天引きがなくなり一気に一年分の請求がきてびっくりするし、任意継続保険料の前納も大変だが、やはり、財布に余裕のある(と思う)人は、あるうちにやっておいた方がいい。

 保険料の前納は、「四月から九月まで若しくは十月から翌年三月までの六月間又は四月から翌年三月までの十二月間を単位として行う」(健保令48条)。

 前納すると保険料は割引きがある(健保令49条)。「・・・年四分の利率による複利現価法によって・・・」計算されるとあるが、実際の額は協会健保又は組合健保に聞けば分かる。

 前納の納付期日など様々な決まりがあるので、早めに問い合わせたい。  


Posted by 青山拓水 at 06:52Comments(0)健康保険

2020年04月07日

「盛り掛けソバ」の謎

 「三島についてどうしても知りたい、三島について納得せずにすますことはできない、という人がたくさんいる」(大澤真幸「三島由紀夫 ふたつの謎」)、私もその一人、「三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜」をやっているというので、先日見にいった。全共闘は反米愛国だったとか、まだまだ知らないことが多々あった。あの事件のヒントになりそうなこともいくつか出てきた。
 本書は「ふたつの謎」をあげている。もう一つは同書によれば「豊饒の海」の末尾である。「この結末を認めてしまえば、・・・展開の全てが・・・無意味なものとして否定されてしまう。」という。
 私はあれはあれでいいと思っている。現象世界はあるようでない、ないようである、風のようなもので、過去は記憶にしかないし、記憶には色も形も重さもない、「権利」というものも見えないのに時に大事なものと取り扱われ人の人生を左右することもある、この世とはそういうもので、あの結末も素直にそのまま受け止めた。
 だが、「三島の自決は謎である。」(前掲書)。本書を読んで謎が解けたという人がいたので読み始めたのだが、なかなか難しいので遅々として進んでいない。
 今日(4/5)の日経最終面に水原紫苑「永遠のジェラール」が載っていて、「若く美しいまま伝説となる運命は、三島が渇望していたものではなかっただろうか。」とあった。いまだに三島は記憶され続けている。
 昨日の日経、出久根達郎の「書物の身の上」を読んでいたら、明治14年に「盛り掛けソバ」が8厘とあった。ソバは「もり」か「かけ」か、あるいは「ざる」かで、「盛り掛け」とはいかなるものか気になったが、身内で若い頃東京都内のとある麺類食堂で「もりかけ」と頼んだらどちらにするか聞き返されたということがあったそうなので、やはり「盛り掛けソバ」が気になる。  


Posted by 青山拓水 at 05:03Comments(0)ひねもす

2020年04月05日

健保・厚年の被保険者要件の整理8(健康保険の任意継続被保険者2)

 任意継続の資格の維持には保険料の期限内納付が必須である。納付を遅延すると、正当な理由がある時を除き、次のとおり、初回遅延でははじめから資格を得ることがなくなり、2回目以降の遅延では、資格を失うことになる。
(a)初めて納付すべき保険料をその納付期日までに納付しなかったときは・・・任意継続被保険者とならなかったものとみなす(健保法37条2項・・・正当な理由がある時は除かれる)。
(b)保険料(初めて納付すべき保険料を除く。)を納付期日までに納付しなかったときは、その翌日に資格喪失(同法38条3号・・・正当な理由がある時は除かれる)。

 上記(a)及び(b)での納付遅延の「正当な理由」については、その有無が争われた社会保険審査会の平成29年9月29日裁決が参考になる。

 この事件は初回遅延に正当理由が認められ資格取得が維持されたものの、2回目以降の遅延に正当理由が認めらなかったことを不服として再審査請求された事案であった。
 裁決文では、「任意継続被保険者の任意継続資格の存続は、専ら保険料納付の有無にかかっており、任意継続被保険者としては、保険料の納付については特に注意を払うことが求められている」としており、任意継続補保険者には保険料納付に対する高度の注意義務があるとされている。
 そして、正当理由について、「この正当な理由とは、天変地異による交通・通信の途絶のような特異な事態のみを意味するものではなく、上記のような任意継続被保険者の立場に照らしてみても、なお、社会通念上、その保険料の納付遅延が宥恕されるべきものと判断されるような事由をも含むものと解するのが相当である」として、正当理由の認められるべき一定の範囲を示している。

 再審査の一方当事者である健保協会は、「正当な理由があると保険者が認めたとき」として、天災地変、交通・通信関係のスト等により納付期日までに納付が困難な場合のほか、任意継続被保険者に保険料納付の意思があるのに、手続等について誤解していた場合(2回目以降は除く。)等については認める取扱いをしている。」とされている。

 このように、健保協会においては2回目以降の遅延には原則として正当理由を認めない、という扱いであったのだが、裁決では次のように、本件についてこれを容認した。
 1回目の遅延については、「請求人は保険料納付の意思を有していたものとうかがわれ、初回の納付遅延であることを勘案すれば、上記説示の任意継続被保険者の立場に照らしてみても、初回納付遅延について正当な理由があるものと認めるのは相当と認められる。」とし、2回目については、「・・・本件納付遅延が請求人としては2回目の納付遅延であることからしても、上記説示の任意継続被保険者の立場に照らして考えるに、本件納付遅延について正当な理由があるものと認める余地はないというべきである」とした。
 なお、裁決文中の「上記説示の任意継続被保険者の立場」というのは、先に引用した「任意継続被保険者の任意継続資格の存続は、専ら保険料納付の有無にかかっており、任意継続被保険者としては、保険料の納付については特に注意を払うことが求められている」を指しているものと思われる。
 遅延の原因が任意継続被保険者にある場合は、初回はともかく、2回目以降は正当理由を認めない、ということであろう。
 2回目以降の遅延でも法律上は「正当な理由」があれば資格を失わないことになっている。しかし、裁決から分かることは、1回目の遅延では不注意程度でも認められるようだが、2回目以降の遅延はかなりハードルが高い、ということである。
 裁判では「特段の事情」があれば認められる旨の判示がされることがある。この「特段の事情」が出た場合は、まず認められることはほぼないと受け止められている。任意継続の2回目以降の遅延も、「特段の事情」と同レベルの、余程の理由がないと認められないということであろう。  


Posted by 青山拓水 at 18:35Comments(0)健康保険

2020年04月04日

詐欺被害と投資経験

 先日の「ガイアの夜明け」で高齢者詐欺被害をやっていた。
 紹介されたホテル投資の一例に、投資経験ゼロの危険性を強く感じた。ある程度の投資経験があればいろいろなリスクを感じたのではなかろうか。ことにこのケースは金銭消費貸借契約なので、貸倒リスクがついてまわる。担保はどうなっていたのだろうか。もしも無担保なら無謀ではないか。こうした、金銭貸借における通常のリスクを見過ごしていては、いかにも狼の前の羊のようで、危険極まりない。

 年金は偶数月に2ヶ月分が振り込まれる。この方は70歳くらいで15万7千円余り、この他は確か週2回の食堂でのアルバイトと聞いた。余裕がないといえばそうだ。
 年金からは、既に所得税、住民税、国民健保、介護保険などが引かれている。この他、固定費として光熱費、家賃または固定資産税などの住居費、通常食費などがかかる。
 この時期の高齢者は、資産を守る段階に入っている。増やそうとする年齢ではない。だが昨今の「老後資金2千万円」が一人歩きし、この言葉に眩惑され、なけなしの貯金をホテルに投資、提示の金利は2%程度だったと思うが、現在の銀行預金よりはかなり高い。
 とはいえ、日本取引所グループのサイトで見ると、株式の加重平均利回りはここしばらく2%台を維持しているし、株なら株主優待もある。株のリスクは概ね知られているが、ホテル投資は未知数という違いも大きい。また、この程度の利回りなら株式以外にも選択肢がある。

 72の法則というのがある。72を年利で割ると、2倍になる年数が出るというものだ。かつて、といっても昭和50年代だったか、8%の時があった。72/8=9、つまり税金を考えなければ9年経てば100万円が200万円になる。2%なら36年である。70歳の人がそんなに待てるか、と思う。無論、倍ではなく1.5倍を目指してもいいのだが、この方は目標額を設定していたのであろうか。そして、そこに到達するのにどれだけ時間が必要か分かっていたのであろうか。あるいは、安定した利払いを期待していたのであれば、不動産投資の一類型であるホテル投資というリスクをどの程度把握していたのであろうか。さらに言えば、現在の生活をベースに先々の収支や金融資産残高推移の見通しを立てていたのであろうか。
 印象では、こういう計画性はなく、ただ単に2%という金利に惹かれて金消契約に捺印しお金を渡したに過ぎないようだった。投資経験ゼロの危うさを感じる。そして、それをあてにした投資の勧誘者。恐ろしいことだ。

 そもそも、2千万円の貯蓄が必要、というのには大いなる誤解が潜んでいる。流言飛語の類、くだんの報告書を一読すればこんな誤解はしないはずである。
 仮に必要額が2千万円としても、それは貯蓄でなくてもいいはずである。30年で計算すれば年間で約67万円、月に約5万6千円、この額を貯蓄から取り崩していくというのは非現実的である。毎年毎年、あるいは毎日毎日、徐々にゼロ円に近づいていくのに耐えられるだろうか。貯蓄はいざという時の安全弁とし、生活費は毎日使って消えていくお金、そういうものは年金や配当、給与などの定時的収入の範囲内でまかなうのが本来である。水道に例えれば、蛇口から出る水を少しずつ残して溜めておき断水に備えておくようなものだ。
 公的年金は終身年金であり、食堂のバイトがなくなってもやっていけるように生活費を工夫できるように考えを重ねたのだろうか。リバースモーゲージ、高齢者向け住宅の比較検討など、お金を渡す前に考えることは多々あったはずである。そもそも、貯金は投資などに回さず、大切にとっておくのが鉄則だ。増やすより守りを固めることが先である。

 今はコロナで金融商品は軒並みガタガタ。ここで狼狽するかチャンスと見るか、人様々、経験や投資姿勢の差が出ているようだが、これについては長くなりそうなので、ともあれ、この事例で感じた、持論に基づく問題点を挙げてみたい。
(1)高齢期の投資は避けるべき、投資に損はつきもの、やるとしても年齢を考え、損を消化できる範囲とする。
(2)安定成長を目指す。ローリスクローリターンを核とする。
(3)投資先は分散する。同一先に全額などもってのほか。
(4)先々までの収支見通しを立て、これを数字の表だけではなくパッと分かるように折れ線グラフなどに表す。そして随時見直す。
(5)世間に名の通った長命の会社を選ぶ。
(6)先方の勧める商品ではなく、自分で決める。リスク・リターンの仕組みの分かりにくいものには手を出さない。
(7)若い頃から少しずつ経験を積んでおく。投資に対する免疫ができてくる。若い頃からの投資経験の蓄積で(1)〜(6)のいずれも身についてくるはず。
(8)ポンタやdポイントでやっているポイント投資をやってみるのも投資学習になるだろう。・・・まだまだありそうだが、とりあえず、この辺りまで。これらを踏まえてお金を出すべきだ。

 ともあれ、まことに心の痛む映像だった。  


Posted by 青山拓水 at 07:15Comments(0)ひねもす

2020年04月02日

健保・厚年の被保険者要件の整理7(健康保険の任意継続被保険者1)

 退職後の健康保険については、(a)在職時加入の健康保険の任意継続被保険者となる、(b)国民健康保険に入る、(c)親族が加入している健康保険の被扶養者となる、の3つが選択肢となる。

 (a)の任意継続被保険者となるための要件は、協会健保のサイトでは、(1)資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」があること。(2)資格喪失日から「20日以内」に申請すること。(20日目が営業日でない場合は翌営業日まで)、手続きは、自宅住所地を管轄する全国健康保険協会の都道府県支部で行う、となっている。
 なお、20日以内の申請期間については、正当な理由があると認められれば、この期間を経過した後の申出であっても、受理され得るとされている(健保法37条1項但書)。

 任意継続被保険者も保険料納付が必要である。
 保険料の負担については、健保法161条で、負担割合について、(a)被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。(b)ただし、任意継続被保険者は、その全額を負担する。」とし、納付義務者について、(c)事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。(d)任意継続被保険者は、自己の負担する保険料を納付する義務を負う。などとしている
 つまり、在職中は保険料の半額を負担し(給料から天引き、健保法167条)、納付は事業主が行う、ということなので、一般被保険者自身が納付遅延の責めを負うことはないが、任意継続の場合は保険料全額の納付義務があり、遅延すれば資格を喪失することになる。

 任意継続の保険料は、健保法47条により、資格喪失時(退職時)の標準報酬月額(上限額があり、現在30万円・・・上限額は変動する、平成31年3月分までは28万円だった、また、健保組合の場合は規約によりこれと異なる場合がある。)に保険料率(40歳以上65歳未満だと介護保険料率が含まれる・・・健保法156条)を乗じた額となる。  


Posted by 青山拓水 at 12:17Comments(0)健康保険