2019年05月04日

働くときの公的保険【1】雇用保険<06>

 離職理由等による給付制限

 雇用保険の基本手当には、離職理由による給付制限というものがある。
 なお、雇用保険法21条では、「基本手当は、受給資格者が当該基本手当の受給資格に係る離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後において、失業している日(疾病又は負傷のため職業に就くことができない日を含む。)が通算して七日に満たない間は、支給しない。」とあり、離職理由に関係なく7日間の待期期間というものがある。

 給付制限は、この待期期間が過ぎてもまだ支給が制限される期間のことである。

 同法32条1項は、「受給資格者・・・が、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと又は公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けることを拒んだときは、その拒んだ日から起算して一箇月間は、基本手当を支給しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。」としている。
 そして、【次の各号】には、拒んだことに正当な理由がて認められる場合として、「紹介された職業又は公共職業訓練等を受けることを指示された職種が、受給資格者の能力からみて不適当であると認められるとき。」などいくつかが列挙されている。

 また、同法33条1項では、「被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合には、第二十一条の規定による期間の満了後一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない。」
 但し書きがあり、「ただし、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける期間・・・については、この限りでない。」となっている。
 ここでは【一箇月以上三箇月以内】となっているが、(*1)の【Q5】を見ると、この場合の給付制限期間は3か月間である。

 さらに、同法34条1項では、「偽りその他不正の行為により求職者給付又は就職促進給付の支給を受け、又は受けようとした者には、これらの給付の支給を受け、又は受けようとした日以後、基本手当を支給しない。」とあり、続いて、「ただし、やむを得ない理由がある場合には、基本手当の全部又は一部を支給することができる。」となっている。
 いずれの条文も2項以降があり、細かな規定があるが、(*1)の【Q5】で簡潔に説明されている。

 なお、離職理由について「事業主と離職者で主張が食い違った場合」について、(*1)の【Q6】で説明されている。
 これを見ると、「・・・最終的に当該本人の住居所を管轄する公共職業安定所において慎重に判定することになっています。事業主一方の主張のみで判定することはありません。」とある。疑問があれば、ハローワークに出向いてきちんと主張していくべきである。

(*1)https://www.hellowork.go.jp/member/unemp_question02.html
  


Posted by 青山拓水 at 19:30Comments(0)雇用保険

2019年05月03日

マンションの建替・再建

 阪神淡路大震災で分譲マンションの建替が問題になり、法整備がされたとは聞いていたが、全壊、つまりマンションが滅失した場合に対応する法律が制定されていたことを、迂闊にも最近知った。
 滅失という用語は借地借家法で見たことはあるが、分譲マンションのような区分所有権の対象となっている建物に関しては、民法の特別法である建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)で規律されているところ、この法律には滅失という事態に対応する条項がなく、マンションが全壊して滅失と評価されると、敷地所有権だけが残り、区分所有法ではなく、民法の原則に戻る、ということである。(*1)
 すると、民法251条では「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」という条文もあって、全員同意がなければ再建することもできない、ということになる。これに対して、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)が制定され、5分の4で再建決議ができる、などの対応が可能となった。
 この法律の2条では、「・・・政令の施行の日から起算して三年が経過する日までの間は、・・・」とあり、期限が設けられている。政令はこれまで3つ制定されている。阪神・淡路大震災、東日本大震災(原子力発電所の事故による災害を含む)、平成二十八年熊本地震による災害である。
 これとは別に、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替法)があるので、素人にはややこしい。被災マンション法は全19条、これに対してマンション建替法は全179条もあり、区分所有法の72条よりもかなり多い。国交省のパンフレット(*2、3)を見たが、これだけでは心もとない感じがする。パンフレットが載っている「マンション建替え等・改修について」というページを見ると、今度は量の多さに足がすくむようであった。
 分譲マンションは権利者が多数で、関係法令も多い。居住している方は、これらの法令を一通りは知っておいた方が良いし、無論分かりやすい解説書があれば是非とも読んだ方が良い、と思った次第である。

   (*1)http://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column001.htm
   (*2)http://www.mlit.go.jp/common/001090270.pdf
   (*3)http://www.mlit.go.jp/common/001090271.pdf
   (*4)http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000050.html
  


Posted by 青山拓水 at 18:52Comments(0)FP