2024年01月14日

オフィス惠愛堂

・・・ 特定社会保険労務士・FP事務所 オフィス惠愛堂 ・・・

 健康、経済、心、これは人生の三本柱です。大切にしていきましょう。

 弊事務所の名称は、代表者の氏名 岩手 清 のイニシャル(K.I.・・・kiyoshi Iwate)から命名しました。

・・・弊事務所について・・・

 弊所は、資産管理(+運用)の自走力をつけていただくことを念頭に置いています。

 お金に関する問題(不安)については、まずは収支予想を視覚化することが有効です。
 そこで、弊所では、ご相談をお受けすると、収支予測をグラフにすることから始めていきます。

・・・お金のルールについて・・・

 お金に関する不安、悩みというのは、実に様々で、複雑でもありますが、お金には、交通法規と同じように、様々なルールがあります。

 例えば、車は便利です。危ないから使わない、という人もいますが、ほとんどの人はリスクがあっても免許を取り運転しています。
 交通法規を守り、安全運転を心がけること、車検などの点検整備をきちんと受けること、保険に入ることなど、大切なことは色々とあります。こうして、安全を確保しつつ、車の利便性を大いに活用しています。
 同様に、投資は危ないからと利用しない方もいますが、お金に関する様々なルールに則っていれば、投資や保険でも、安全運転が可能になり、一定の成果が得られるようになってきます。
 
 昨今はiDeCo、NISA、ファンドラップなど、横文字全盛で、複雑な金融商品が多くなっています。運用の仕組みや費用(口座管理手数料や信託報酬等)など各商品の内容や特徴をよく理解しておく必要があります。ネットでも様々な情報を得ることができますが、これらを基に、ご自身で主体的に取捨選択していただけるようになっていただきたいと思います。

 投資のルールの一つに、分散があります。これに外れていると、時に大変なことになってしまいます。例えば、ある電力会社の株式一本に絞って数千万円をかけていた、という方が報道されていました。投資は分散すべきなのです。
 投資被害に遭ったというニュースに接しますと、仕組みのよく分からないものには手を出さない、また、リターンの大きなものはリスクも大きく要注意、といったルールに反しているのではないか、と思われます。

 退職金が入って金融機関で投資デビュー、という方もおられますが、投資は一定の経験と知識がないと大けがする場合があります。定年まで投資経験がない方は金融機関にとっては上客、なのかもしれませんが、大切な退職金、まさに大切にしたいものです。
 一定の経験と知識があっても安全運転ができるかどうか、という投資の世界独特の世渡りのスキル、これは運転経験の蓄積と同様、時間をかけ様々な経験を経てじっくりと育てるものだと思います。投資でも自動車学校のように学びと場内実地から始め、仮免で外に出て・・・と、徐々に慣れるようにしていくのが良いのではないでしょうか。
 また、お金は貯めるより使う方が難しい、ともいわれます。上手に貯めて上手に使う、こういうようになりたいものです。

 ともあれ、お金のルールを知ることがはじめの一歩、です。
 次は、行動です。プランを実現するには、実践しなければ始まりません。いくら机上であれこれ考えても、畳水練の域を出ません。行動すること、実行に移すことで、見え方が豆電球からサーチライトに変わってきます。視界がうんと広がるのです。 

 弊事務所では、ご相談事項の問題点を整理し、ご自身で主体的に取り組んでいただけるようになっていただくことを目標にしております。目標に向かってプランを策定し前進していただけるようになっていただきたいと思います。

 将来の一定期間にわたる収支見込みを織り込んだライフプランを策定することが、AtoZ、強力な友となるでしょう。
 
・・・三大資金+相続・・・

 教育、住宅、老後にかかる資金は人生の三大資金といわれますが、例えば、賃貸住宅にお住まいの方が持家取得に住宅ローンを利用する場合、どのような点に注意すべきでしょうか。
 現在の収支状況、そして今後の収支の推移をいくつかの想定事項を基に複数作成して検討する、ということが考えられます。これは退職後の家計収支についても、同様といえるでしょう。
 そして、策定されたいくつかの想定パターンを基に、対応を考えていただくことになります。

 昨今話題になっいる相続の場合につきましては、法律、税金などの専門家への相談が必要となる場合がほとんどと思われます。専門家への相談に際しては、事前にご自身のお考え、希望を基に問題点を整理し、相談しやすいようにしておく必要があります。

 いずれにしても、問題点を明らかにし、整理してゆき、必要ならそれぞれの専門家に相談して意見、助言を求めることとなります。専門家に委ねることとなった場合におきましても、ご自身で主体的に取り組み判断していただく姿勢が必要です。

 弊所はそのお手伝いをすることを業務の柱としております。

 ・・・ライフプランについて・・・

 月々の定収を日々の生活費に充て、備えは貯蓄で、これがライフプラン策定の要です。
 ライフプランの検討には、収支モデルのグラフ化が有効です。
 例えば、収入と支出を折線で、その差を棒グラフで表しますと、推移が一目瞭然となります。
 仮に、5年後に車を買い換える所要額が250万円としますと、何をいくら増やしいくら節約するか、いろいろと机上で検討ができます。
 あるいは、90歳、95歳時点で預貯金などの資産がいくら残るのかも、視覚化ではっきりと分かってきます。
 この作業をコツコツと行う中で、いろいろなことが浮かんでくるでしょう。
 
 ・・・年金を柱に、プラスアルファを・・・
 
 人生100年時代に対応できるのは定期的に終身受給できるもの、例えば終身年金、その代表格はやはり公的年金、長い老後の経済を支えます。

 公的年金につきましては、将来の年金見込額を始め、年金の繰上げ繰下げの留意点など、知っておきたいことは色々とあります。
 公的年金につきましては、日本年金機構のHPや書籍等参考になるものは多々あります。まずはご自身で理解に努めていただく姿勢が大切です。

 また、公的年金を補完するものとして、個人型確定拠出年金(iDeCo)、個人年金保険、財形年金、企業年金などの、年金という言葉が付いた様々な金融商品があります。
 株式や投資信託などで資産形成を図ることもあるでしょう。

 これら多数の金融商品は、ご自身できちんと理解し判断して取捨選択しなければなりません。

・・・長く働く・・・

 年齢にかかわらず、就業の機会があれば前向きに取り組む姿勢も肝要です。非常勤や短時間、不定期でありましても、働くことは健康の維持増進にも有益です(*1)。

 労働基準法や労働・社会保険(雇用保険、健康保険等)などの、働くときの基礎知識も備えておけば、いざという時に限らず、普段においても有用です。

・・・まとめ・・・
 
 日々の生活費は月々の定例収入で、備えは貯蓄で、これが健康家計の第一歩です。

 リタイア後の糧は、年金や株式の配当などの「定期収入」と安全弁としての一定の「貯蓄」となりましょう。これらはなるべくリタイア前に充実させておきたいものです。人生後半の主要な経済基盤となります。
 また、定年後においても働くことができればさらにいいでしょう。

 長く働く、年金・健保など公的保険の最大限活用、きちんとした収支管理、投資なら堅実運用、これらが豊かな人生の原動力、「安定」を支えます。
 もちろん、それには健康第一です。
 健康、経済、心、これは人生の大切な3Kです。

・・・先手必勝・・・

 この分野は先手必勝です。
 年金を基本としたライフプランを早目に組み立てれば、問題点に気づくのも早まり、対応可能な時間も確保できるでしょう。


(*1) 退職後の就労と健康については、例えば、「https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/15/050800004/020500103/」をご参照ください。

・・・ご相談例・・・

 以下はご相談内容の一例です。

○家計の見直し&ライフプラン
 家計の健全化、合理化のヒントを見つけ、収支計画のしっかりしたライフプランを構築していきます。

○保険の見直し
 まずは公的年金・公的保険についてよく把握していただきます。その上で、不足の程度を推定していきます。
 そして、多くの場合、生命保険や損害保険の見直しも、ことに有効です。
 
 国民年金、厚生年金保険ともにさまざまな給付があります。
 健康保険、雇用保険、労災保険などの給付も多様です。
 生命保険や損害保険も、ご自身でよくよく咀嚼して人に説明できるくらいにしたいものです。
 これらを俯瞰しながら、補完必要額を考察していきます。

○給与明細書を探訪
 給与明細書には、基本給や時間外手当などの大切な労働条件に加え、所得税や住民税・保険・年金などライフプランの重要項目が満載です。労働条件の確認とともに、家計の健康管理や耐久性のある生活設計など、給与明細書を深耕しながら大切な情報を読み解いていきます。給与明細書の標準的な項目を素材にしますが、お手元の給与明細書をお持ちいただいても結構です。

○特定社労士業務
 パワハラ、残業代未払い、解雇・雇い止め等の労働トラブルのご相談。

・・・終わりに・・・

 これこれの問題がある、と思われた方は、もうその時点で好転を始めています。解決しようという意思が動き始めたからです。その動きを大切にしましょう。
 それが安定して進んでいけるよう、お手伝いできるべく、私も日々研鑽を積むようにしています。

 (お問い合わせ)Email : office.kei.ai.do@gmail.com  


Posted by 青山拓水 at 17:39Comments(0)労働基準

2024年01月13日

ダブルワークの制限・禁止

 もとよりダブルワーク(兼業・副業)は自由にできる、のが原則である。勤務が終われば自由時間であるからだ。しかし、仕事に差し障りのあるものは制限されたり禁止されたりすることがある。
 厚労省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」3ページ、8ページを見ると、裁判例から、禁止又は制限される場合として、次の4項目が挙げられている。
(1)労務提供上の支障がある場合
(2)業務上の秘密が漏洩する場合
(3)競業により自社の利益が害される場合
(4)会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
 厚労省のモデル就業規則(令和5年7月版)の70条にも同様の記載がある。
 勤務先の就業規則でこうした内容が規定されていれば明確であるが、そうでなくても、ダブルワークを考える場合には、十分に注意したい。  


Posted by 青山拓水 at 21:11Comments(0)労働基準

2023年09月22日

消化器系疾患の労災認定

 あるセミナーで、トラック運転手の脳血管疾患と心臓疾患の発症率は他の労働者の約8倍、と聞いたことがある。
 同じコンビニでも日本一忙しいところもあれば日本一忙しくない(暇な)ところがあるはずだが、時給はほぼ同じと思う。考えてみればおかしなことではないだろうか。同様に、これほど重篤疾患の発症率が高い職種なら、通常の賃金に加えて、何らかの手当の支給があって然るべきと、考えてもおかしくない。
 それに、バスの運転手などでは、神経に沿って胃潰瘍ができる、と、これは相当昔のことだが、聞いたこともある。
  職業運転手というのは、大変な仕事なのだと思う。
 たまたま朝日新聞の過去記事で、「出血性胃潰瘍で死亡の男性を労災認定 消化器系疾患では異例 労基署」というのを見かけた( https://www.asahi.com/articles/ASR635K8BR5RPTIL00B.html)。
 記事によると、消化器系疾患での労災認定は困難というが、それが認められた事例である。
 記事は今年の6月、わりと新しい。
 記事には、2004年に十二指腸潰瘍で労災が認められた最高裁判決も載っている。
 検索すると、ロア・ユナイテッド法律事務所の、「海外出張中の十二指腸潰瘍が労災となるか」という記事があった。(https://www.loi.gr.jp/law/rousai-48/)。
 また、エソラという法律事務所の、「過重労働と消化器疾患の労災認定」という記事もあった(https://rousai.esora-law.com/rousai/h16-9-7/)。
 こちらは先の最高裁判決について割と詳しい。
 これからは、消化器系疾患等、脳血管疾患と心疾患以外の労災認定事例が増えていくのではないか、とも思われるところだが、そもそも労働災害などあってはならないことである。
 これまで表面化してこなかった労災事案が日の目を見るのは然るべきことだが、先に取り組まれるべきは職業運転手の労働環境、業務の改善であることは言うまでもない。  


Posted by 青山拓水 at 21:46Comments(0)労働基準

2023年07月07日

退職代行サービスを利用する労働者の実態について

 こういうサイトに行き当たった(*)。
 慰留ハラスメントというのがあるそうだ。ハラスメントにも色々あるのだ。
 労働局・監督署の総合労働相談コーナーでの個別労働紛争相談では、「いじめ・嫌がらせ」に次いで「自己都合退職」に関する相談が多いという。「いじめ・嫌がらせ」が一位というのは残念ながらだいぶ前からそうである。
 「自己都合退職」で相談するということだから、退職に関して何らかの揉め事が起こっていて、中には対応が難しい場合もあるのだ。そこで権利義務をきちんと清算する退職代行という業務への需要がある、ということであろうか。
 「人の悩みというのは、他人には理解できないことも多いし、強がって見せていても本当は折れてしまう寸前の方もいらっしゃる・・・私の尺度でその人のつらさを測るようなことはやめようと心掛けている。」というところは参考になる。

* https://www.rosei.jp/readers/article/85092  


Posted by 青山拓水 at 19:40Comments(0)労働基準

2023年06月11日

ツクイ事件

 クラウドサービス会社のサーバーがウィルスにやられて障害発生とのこと。バックアップがないとデータ消失ということもあるので、自衛は必要。世の中ネットなしでは成り立たない。
  先日、映画「怪物」をみたが、こうした必要で目に見えないものの危険性がテーマかと思ったが、当たらずとも遠からずだったか。

 映画の感想・・・
 虚言讒言、虚実ないまぜのイエロー・ジャーナリズム、関係者多数で首謀者不明、ついに社会から放逐。これが学校を舞台に進行していく。どうにも止まらない、という感じだ。
 子供というのは怖い。ことに集団になると尚更。大人社会でも同様かもしれないが。
 社会に潜んでいる危険性、これがいつ顕在化するか、暴れるか。
 労災では精神の障害が最多、労働相談ではいじめ嫌がらせが断トツ、こんなことが浮かんだが、先日の水害同様、いつ災難が降りかかるか分からない。
 映画館の中だけの出来事なら良いのだが。考え始めると、あれもこれもと、思慮散開。
 この頃ある程度の価格のワインは味わいに多様性があることに気がついた。単純ではない。良い映画というのもそうかもしれない。

 さて、映画鑑賞の少し前、ツクイ事件(福岡地裁小倉支部 平28.4.19判決)というのを知った。
 ネットで検索すると、色々と出てくる(*1〜*3)。

 労働者側勝訴と言っても、35万円の損害賠償ではあんまり、という感想を持ったが、やはり双方不服で控訴、その後控訴審(高裁)で和解したとのことである。
 参照したサイトには、従前から原告の業務態度には問題があったとの記述があり、マタハラ指針(事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成 28 年厚生労働省告示第 312 号)*4)の4(4)(ⅱ)には、「妊娠等した労働者の側においても、制度等の利用ができるという知識を持つことや、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと」というくだりがあるが、それにしても、*3を読むと、相当にひどい。

 映画を見て、言葉で人の人生は運ばれていくのか、と思われた。そして、複数の関与者の言葉、思いが一方向に働くと、とんでもない方向に向かってしまう。そういう現象を「怪物」と名付けたのだろうか。
 映画ではそれに流されてしまって、その怖さが伝わってきたが、しかし、本件では、これに敢然と立ち向かい、相当の労苦があったと思われるが、和解に至っている。

 パワハラ、モラハラ、マタハラなど、様々なハラスメントに遭っている人には、我慢か、泣き寝入りか、どう立ち向かうか、思うところは様々にあるところだろうが、本件は参考になる事例の一つである。

参照したサイト
*1 https://www.tenma-lo.jp/.../labor-other/labor-other01/1736
*2 https://www.law-pro.jp/pdf/news20161215.pdf
*3 https://news.yahoo.co.jp/.../osakabesayaka/20171214-00079194
*4 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605635.pdf  


Posted by 青山拓水 at 18:36Comments(0)労働基準

2023年04月22日

適応障害と労災一考

 この頃、適応障害という語を聞くことが増えてきたような気がする。
  日経4/22のS7面にも五月病と適応障害の解説記事。
 適応障害とは、ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A9%E5%BF%9C%E9%9A%9C%E5%AE%B3)によると、「適応障害(てきおうしょうがい、英: adjustment disorder:AD)とは、はっきりと確認できるストレス因子により、著しい苦痛や機能の障害が生じており、そのストレス因子が除去されれば症状が消失する特徴を持つ精神障害」となっているが、門外漢には難しい。
 トヨタ・パワーハラスメント事件では労働基準監督署の認定は適応障害だった。たまたま担当した弁護士の講演を聞く機会があったが、相当程度精神疾患の専門知識がないと対応できない事件だったと思った。

 厚労省の「精神障害の労災認定」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120215-01.pdf)の2ページには、精神障害の労災認定の3要件が示され、また、(1)の 「認定基準の対象となる精神障害」については一覧表が掲載されており、13ページには、「適応障害」を発病したとして認定された事例が載っている。

 3要件は次のとおりである。
 (1)認定基準の対象となる精神障害を発病していること
 (2)認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
 (3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

 精神疾患については門外漢であり、適応障害はこの一覧表では明記されていないのが気にはなるが、この一覧表のF4(神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害)に対する診断名として適応障害が挙げられているサイトもあり(https://atomfirm.com/jiko/39674)(*1)、13ページの事例の他にも、トヨタ・パワーハラスメント事件でも労働基準監督署の認定は適応障害だったことから、ともあれ、適応障害と診断されれば労災の対象となる病名、といえるであろうことは分かる。
 なお、(*1)には、「医師によってどんな診断名が出されたのかが労災認定に大きく影響・・・」とある。要注意である。

 (2)について、昨今は人手不足の職場が増えていると聞く。そこで、例えば人員が削減されて業務が特定の個人に集中したものの、事情で時間外労働がほとんどできなかった、という場合を想定してみる。
 長時間労働は数字で測定できうるので分かりやすいが、業務集中はあったものの時間外労働がほとんどなかった、という場合、「精神障害の労災認定」の「業務による心理的負荷評価表」で探すと、「特別な出来事以外」の表の15、23、26、30〜32(人員減に伴う職務遂行困難への対応について上司等とのトラブルがあった場合が考えられる)辺りかと思われるが、「心理的負荷の強度を「弱」「中」「強」と判断する具体例」の欄をみると、いずれも原則として「弱」か「中」である。
 やはり、時間外労働の有無が大きい。「精神障害の労災認定」の13ページの事例でも、「・・・さらに、この出来事後に恒常的な長時間労働も認められることから、総合評価は「強」と判断・・・」となっている。
 時間外労働がほとんどできなかったという設定にすると、ハードルが高くなる。

 労災認定が受けられなかった場合は、審査請求という道もあるが、健康保険の傷病手当金を請求するという選択肢もある。
 万一過剰業務で何らかの疾病を被るようなことがあると、一人だと右往左往することも考えられる。労災や傷病手当金は労働保険・社会保険の分野なので、例えば最寄りの社労士会などに聞いてみるのも、歩を進めるに有意である。

  


Posted by 青山拓水 at 22:07Comments(0)労働基準

2023年02月21日

富山技能実習生強制帰国未遂事件(富山地裁H25.7.17)

 こんな事件があったとは。驚いた。判決はH25、すると事件はその前、10年程前の事件ということになる。
 10年前はこんな状態だったのか、その酷さに驚く。
 労基法(均等待遇、産前産後休業と解雇制限)、育介法(育児休業)、男女雇均法(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱禁止)、マタハラ防止(育介法、男女雇均法)など、産前産後に関する保護法令は技能実習生にもあまねく適用される。それゆえ、富山地裁の判決は至極当然であるが、なぜ訴訟に至らないと権利が実現されないのか。
 検索してさらに驚いたのは、弁護士ドットコムニュース(https://www.bengo4.com/c_16/n_9185/)や、研修生ネット通信(http://www.tonan.jp/download/k-kenri/k-net15.pdf)。誠に痛ましい事件だ。
 世界から人身売買などと言われるのは、全くこんなことがあるからだろう。
  もう10年ほども前の、「過去」の事件であり大きく改善されていることを望む。
 「過去」ではあるが、被害者の傷はそうそう癒えるものではない。
 暗い中で一つだけ。研修生ネット通信の末尾に、懐かしいO先生の名があった。お元気にご活躍されているようだった。  


Posted by 青山拓水 at 21:15Comments(0)労働基準

2022年08月27日

モラハラ一考

 パワハラと重なる面があるモラハラ(モラルハラスメントの略語)。思い当たる節があって、サイトを巡って見た。
  厚労省「こころの耳」の用語解説には「言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせることをいいます。パワハラと同様に、うつ病などのメンタルヘルス不調の原因となることもあります。」とある。
 これだけではピンとこないかもしれないが、検索してみると、「ミラとも転職」というサイトでは、具体例が37記載されていた(https://cj-miratomo.jp/5056/...)。
 また、先のNHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」での五十嵐(本郷奏多)のひなた(川栄李奈)に対する「(お釣りを数えながら)ふ~ん、引き算はできるんだ」などの発言もモラハラの一例とされているそうだ(https://news.yahoo.co.jp/.../c4bb9b2edfd148db490d90fd9945...)。
 こんな例は割合身近にありそうだし、多かれ少なかれ、実地に経験している人は結構いるのではないだろうか。
 こういう行為は程度問題で、初めのうちはまだしも、繰り返され、執拗になってくると、イエローカードからレッドカードになり、加害者性、被害者性がくっきりとしてくる。数少ない相談経験からだが、こういえると思う。
 私の現役時代を振り返っても、加害者性のはっきりした人は、何人かいた。無論、その相手は被害者である。その頃はパワハラだのモラハラだのという用語も認識もなかった。ただありふれたイジメ、くらいに皆思っていた。今はこういうことに対処しようとする組織的な体制ができていると思うのだが、内部通報してもダメな場合がある(例えば、https://www.tokyo-np.co.jp/article/140945)。残念なことだ。記事を見て、言葉もない。
 被害者の特徴について、AIDEMという会社の「モラハラとは?意味や定義・事例をもとに解説」というページの記述が参考になった。(https://www.aidem.co.jp/.../reterm/harassment/681/index.html)。
 加害者については、ベリーベスト法律事務所の「モラハラとは?家庭や職場での具体的事例や対処法を解説」というところの記述が、身近にいた人によく当てはまっていて、この人は何人かの人から顰蹙を買っていてパワハラ人間と思っていたが、より正確にはモラハラ人間であったようだ(https://best-legal.jp/moral-harassment-how-to-solve-7356/)。
 被害者、加害者の特徴は、経験から、まあまあ納得である。
 モラハラを受けた時の対応については、先のベリーベスト法律事務所ののサイトでは、録音など記録を取る、受診して診断書を証拠の一つとする、労働契約上の安全配慮義務に基づく中止要求、慰謝料等の損害賠償請求など、いろいろと載っている。
 労働問題では、都道府県労働局などが間に入って解決のあっせんを行なっている。
 独立行政法人労働政策研究・研修機構のサイトには、「第107回労働政策フォーラム(2020年1月10日)職場のパワーハラスメントを考える─予防と解決に向けて─」というところに、あっせん事例が3つ紹介されている(https://www.jil.go.jp/.../05-jirei3-tokyo-roudoukyoku.pdf)。
 どれもパワハラ事案とされているが、どちらかといえばモラハラ事案の側面が強いように思われる。
 やはり、パワハラとモラハラとでは、重なる部分がかなりある。
 パワハラとモラハラの違いについては、アディーレ法律事務所の「モラハラ(モラルハラスメント)の意味は?パワハラとの違いも解説」が参考になった(https://www.adire.jp/lega-life-lab/mobbing-meaning255/)。
 とはいえ、どちらであるかの区別よりも、不調をきたす前に、早急な解決を探ることの方が、もちろん肝要である。こうした問題は、労働生産性が落ちるし、その人のために何人も退職者が出ている、という話も聞く。企業にとっても、迅速・的確な対応が必要である。  


Posted by 青山拓水 at 12:50Comments(0)労働基準

2022年08月12日

いじめ・パワハラとうつ病

 労働トラブルではいじめやパワハラに関する相談が割と多い、と感じる。

 ところで、障害年金の手続では初診日が重要となるが、精神疾患の場合、初めに内科などを受診していて、それがすぐには分かりにくい場合がある,と聞く。
 そこで、ネットであれこれ検索してみた。

 まず、*Aの「4.うつ病患者は何科に受診しているか?」をみると、多いのは内科で、精神科と心療内科を合わせても1割に満たない。確かに、最初から専門医にかかる人は少ないことが分かる。
 また、まずどのような診断を受けているのか。

 *Bの資料はなかなか詳しく載っている。*Aの表と同じものもある。「うつ病患者さんが最初に受診した診療科と受けた診断名」という表をみると、うつ病・うつ状態と診断された人は25%となっている。残り75%はうつ病以外の診断であった。

 うつ病は心の風邪で、誰でも罹る、とも聞く。
 一生のうちでうつ病に罹患する人の割合(生涯有病率)をみると、うつ病が 7.5%、いずれかの精神障害が 18.6%、などとなっている。(*C「職場における自殺の予防と対応 Q&A」)
 7.5%や 18.6%というのは、病気としては珍しくはない、といえそうである。

 労働トラブルでは、職場のいじめが増えていると聞く。
 令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況によると、「いじめ・嫌がらせ」の件数が引き続き最多となっている。(*Dの5頁)

 「いじめ・嫌がらせ」で精神疾患となり、出勤できなくなる事例も少なくない。
 そこから、*Aで見るように、専門医に受診するのではなく、また、*Bにあるようにうつ病とも診断されず、きちんと対処されずに時間が経ってしまう、ということが起こっているのではないだろうか。
 ことが起こってからでは遅いのだが、現実をみると重いものがある。
 事業主側の安全配慮義務も問われる場面だが、対応すべき場合に就業規則の整備状況も問題となるかもしれない。

 かつては、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病が4大疾病といわれた。それに、新たに精神疾患を加えて「5大疾病」となったそうだ。(*E)
 これは2011年の記事だから、10年以上も前のことである。

 そこで、精神疾患の患者数の推移も見てみた。
 すると、精神疾患の患者数は増え続けている。(*F)

 さらに、5大疾病のうちでは、「精神疾患」 が最多で推移しているという。(*G)
 うつ病の場合、自殺に至る場合もある

 まず、主要国における自殺の現状をみると、日本は自殺者数3位、自殺率2位である。(*H)
 かなり高い。
 なぜこのように高いのか、考えさせられる。

 原因・動機別の自殺者数の推移では、1位は「健康問題」、次いで経済・生活問題や家庭問題となっている。(*I)

 「健康問題」では「病気の悩み・影響(うつ病)」が最も多い、次いで「病気の悩み(身体の病気)」となっている。(*Jの62頁「第2-3表 健康問題による自殺者数の内訳の年次推移」)
 自殺者数総数に対する、勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者の割合は増加傾向にある。(*Kの28頁)
 また、勤務問題では、仕事疲れ、職場の人間関係の順である。(*Kの30頁)

 以上、職場でのトラブルとうつ病について、ネット逍遥をしてみたが、受けている印象と統計結果とがほぼ付合していて、深刻な状況と受け止めざるを得なかった。

*A 「官民協働特命チーム(2011 年 12 月 21 日) うつ病対策、精神科医療 防衛医科大学校・防衛医学研究センター・行動科学研究部門・高橋祥友」https://www.mhlw.go.jp/.../06-Seisakujouhou.../s1_41.pdf
*B 「うつ病の病態・診断・治療」http://www-yaku.meijo-u.ac.jp/.../101203%20lecture...
*C 「職場における自殺の予防と対応 Q&A」https://www.mhlw.go.jp/.../anzeneisei12/pdf/03_0052.pdf
*D 「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000797476.pdf
*E 「精神疾患加え「5大疾病」 厚労省、13年度から医療計画に」日経電子版2011年7月7日 https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0703S_X00C11A7CR8000/
*F 「第13回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会 参考資料1」https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940708.pdf*G 「日本の5大疾病「精神疾患(うつ病)」」https://kaigai-shin.net/archives/11304
*H 「自殺対策白書 」https://www.mhlw.go.jp/content/h29g-2-3.pdf (以下同)
*I https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/16/dl/1-05.pdf
*J https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/16/dl/2-02.pdf
*K https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/18/dl/18-1-4.pdf  


Posted by 青山拓水 at 12:23Comments(0)労働基準

2022年06月05日

週20時間未満となった場合の雇用保険

 色々とサイトを巡回してまとめてみた。
 週所定労働時間が20時間未満となった場合雇用保険の資格喪失となる。
 ただし、雇用関係が継続しているため、離職票は資格喪失時ではなく、実際に退職した時点で交付されていた。この取り扱いが、平成23年3月10日以降変更となり、資格喪失の時点で退職したものとして、離職票も交付されるようになった。(*1)
 ハローワークでは、実際の離職時ではなく、雇用条件が変更になった時点に遡って、被保険者資格の喪失手続きの処理を行うそうだ。(*2)
 基本手当の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間である。
 平成23年3月10日より前の取り扱いでは、離職票を受け取った時点で資格喪失から1年を経過していれば、基本手当の受給ができないことになる。(*2)
 それが、変更後はすぐに取得できるので、こういう事態は生じない。
  なお、所定労働時間の変更が臨時的・一時的(概ね6カ月以内、育児のために時間を短縮した場合には、その子が小学校就学前)である場合には資格喪失の手続きは必要ない。(*3)
 しかし、当初は臨時的・一時的であっても、その後臨時的・一時的でなくなった場合は資格喪失となり、離職票が発行される。(*4・5)
 以上から、1週間の所定労働時間が20時間未満になったことにより被保険者資格を喪失した場合,被保険者期間の条件を満たし,積極的な求職活動を行うなど,要件を満たせば,今の会社で働きながらでも,失業給付を受給できる場合がある。(*6)

*1 https://www.gourmetcaree.jp/.../social-insurance/2142.html
*2 https://www.hoken-clinic.com/teach_qa/work/8.html
*3 https://jsite.mhlw.go.jp/.../koy.../QA/hihokensya_qa.html...
*4 http://www.tama5cci.or.jp/hp/yanagida/?p=3287
*5 https://work8.jp/so4/
*6 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/work2/wn500122.html  


Posted by 青山拓水 at 17:33Comments(0)労働基準