2020年02月29日

健保・厚年の被保険者要件の整理3(被保険者)

 健保・厚年の適用要件は(1)適用事業所に雇用されていること、(2)勤務日数等の要件を満たしていること、の二つである。

(1)については、健保=「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう(健保法3条)、厚年=適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする(厚年法9条)、とされている。

(2)の勤務日数等の要件は次に該当することである。
 1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上であること(いわゆる4分の3要件)。

 ただし、上記に該当しなくても、次の全てに該当すれば被保険者となる
 a 週の所定労働時間が20時間以上あること
 b 雇用期間が1年以上見込まれること
 c 賃金の月額が8.8万円以上であること
 d 学生でないこと
 e 被保険者数が常時501人以上の法人・個人の適用事業所、及び国または地方公共団体に属する全ての適用事業所に勤めていること(501人未満の法人・個人の適用事業所であっても、労使合意に基づき申出をした場合は適用される)

 なお、a〜dは健保法3条1項9号及び厚年法12条1項5号に、eは年金機能強化法(公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律)の附則第17条第1項及び第46条第1項に定められている。
 根拠法令がまとまっておらず、あまり言いたくないが、分かりにくい法体系である。

 参考 「社会保険の加入についてのご案内」https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/jigyosho/20150518.files/1101.pdf
 
 年齢要件について、健保の場合は75歳未満(75歳からは後期高齢者医療の被保険者になる)、厚年は70歳未満である。  


Posted by 青山拓水 at 19:27Comments(0)健康保険年金

2020年02月28日

健保・厚年の被保険者要件の整理2(任意適用事業所)

健保・厚年の任意適用事業所
 適用事業所でないところは、被保険者となり得る者(注1)の2分の1以上の同意を得て、厚生労働大臣に申請し認可を受ければ適用事業所とすることができる(健保法31条、厚年法6条)。この場合は不同意の者も加入対象となる。
 また、適用事業所がその要件を欠くこととなった場合(個人事業所で常時勤務の従業員が5人未満になった場合等)については、そのまま任意適用事業所としての認可があったものとみなされる(健保法32条、厚年法7条・・・ただしこの措置は厚年の船舶の事業所は除かれている)。
 任意適用事業所は、被験者である従業員の4分の3以上の同意を得て、厚生労働大臣に申請し認可を受ければ適用事業所でなくすることができる(健保法33条、厚年法8条)。

(注1)「被保険者となり得る者」(被保険者要件)は次回以降に記載。

 以上、任意適用事業所については、健保、厚年ともほぼ同一である。  


Posted by 青山拓水 at 17:36Comments(0)健康保険年金

2020年02月27日

健保・厚年の被保険者要件の整理1(適用事業所)

 健康保険。厚生年金保険(以下、健保・厚年と略す)の被保険者となるためには、事業所要件と労働条件要件を満たす必要がある。
 事業所要件というのは、「適用事業所」かどうかということである。原則として、適用事業所に勤めている必要があるが、例外的に、適用事業所に勤めていなくても被保険者になることができる場合がある。
 なお、下記のように、法人の事業所は業種、人員規模を問わず適用事業所となる。つまり、株式会社など法人に勤めていれば、事業所要件は満たしている。個人事業所の場合は一定の制約がある。

適用事業所
 健保・厚年の適用は事業所単位であり、適用される事業所の要件が定められている。
 ただし、適用事業所に該当しなくても、一定の要件を満たしていれば適用事業所となることができる。「任意適用事業所」といわれる。
 適用事業所は法人と個人とで扱いが異なっている。
 法人は業種、人員規模を問わず適用事業所となる。
  個人の場合は、特定の業種(いわゆる法定16業種)かつ常時5人以上の従業員がいれば適用事業所となる。法定16業種でないか、法定16業種でも従業員5人未満だと適用事業所とはならない。この場合は任意適用事業所となる方法がある。
 法定16業種は、次の業種以外はほぼ対象となっている。
 除外業種・・・農林水産業等の第一次産業、飲食、理美容等のサービス業の一部、弁護士、公認会計士等の法務関係業と宗務業など。
 以上は健保・厚年共通の適用事業所だが、厚年独自の適用事業所として、一定の船舶がある。この場合は船舶所有者が適用事業所の事業主となる。

 適用事業主に勤め、一定の要件を満たせば健保・厚年の被保険者資格を取得する。雇用主は従業員の資格取得の届出義務がある(健保法48条、厚年法27条)。届出義務を怠ると罰則(六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金)の対象となる(健保法208条、厚年法102条)。  


Posted by 青山拓水 at 07:12Comments(0)健康保険年金

2020年02月13日

パニック障害と障害年金

 パニック障害は障害年金の対象にならないと小耳に挟んだ。
 そこで、国民年金・厚生年金保険障害認定基準〔第8節/精神の障害〕(注1)にあたってみた。
 この3ページに「神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。」とある。
 これによると、神経症は原則として障害年金の対象とならないが、精神病の病態を示していれば別、ということである。
 神経症とされるものは、社会不安障害(恐怖症)、パニック障害と全般性不安障害、強迫性障害、気分変調症(抑うつ神経症)、解離性障害(ヒステリー性神経症)、身体表現性障害、離人性障害(離人神経症)などがあるそうだ。(注2)
 小耳に挟んだことは原則的な事実のようだ。例外は、精神病の病態を示している場合である。
 さて、それでは労災はどうだろうか。
 厚生労働省の「精神障害の労災認定」(注3)の2ページには、10に分類された「精神及び行動の障害」(注4)が載っている。ここでは、「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」というものもある。障害年金では原則対象外の神経症も対象になっているのではないか、とも受け取られる。
 また、「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(注5)の2ページに「対象疾病のうち業務に関連して発病する可能性のある精神障害は、主としてICD-10のF2からF4に分類される精神障害である。」、「いわゆる心身症は、本認定基準における精神障害には含まれない」とある。(注6)
 F2は「統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害」、F3は「気分[感情]障害」、F4は「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」である。
 精神障害の労災認定の範囲は障害年金より広そうに見えるが、労災認定に必要な業務遂行性、業務起因性の判断にあたり、(1)認定基準の対象となる精神障害を発病していること、(2)認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、 業務による強い心理的負荷が認められること、(3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められな いこと、の3つが重要な要件として吟味される。(厚生労働省の「精神障害の労災認定」(注3)の2ページ参照)
 以上の、メンタルに関する障害年金と労災の違いは、厚生年金保険法は「・・・労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い・・・」(第1条)、労災法は「・・・業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い・・・」(第1条)とあるように、目的が異なることから、むしろ当然かもしれない。
 一般に障害年金の手続きは難しいことがあるといわれる。その上精神の障害は外からは分かりにくい。国の文書でも、例えば下記の注6を読んでも難解だ。
 受給できるかどうかなど、少しでも疑問がある場合は、年金事務所や労働基準監督署、障害年金・労災に詳しい社労士などに相談して迅速に解決を図った方が良いのはもちろんである。
 (注1)厚生労働省「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」第1回(平成27年2月19日)資料2【https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12501000-Nenkinkyoku-Soumuka/0000075327.pdf
 (注2)https://www.mental-health.org/fuan1.html
  (注3)https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120427.pdf
 (注4)国際疾病分類第10回修正版(IC D-10)第5章「精神および行動の障害」に分類される精神障害で、F0〜F9の分類コードが付されている。
 (注5)https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120118a.pdf
 (注6)「精神障害の労災認定実務要領」http://www.joshrc.org/~open/files2011/20120330-001.pdfの3ページに「認定基準が「対象疾病のうち業務に関連して発病する可能性のある精神障害」を「主としてICD-10のF2からF4に分類される精神障害」としているのは、F0は器質性の原因によるものであり、F1は有害物質(精神作用物質)の使用によるものであること、F5からF9は、主として個人の生育環境、生活環境等に基づくものと考えられ、業務との関連で発病することはほとんどないことによる。」とあり、「また、「いわゆる心身症は、本認定基準における精神障害には含まれない」としているのは、心身症が精神障害の1つと誤解されている面があるが、その定義が、「その発病や経過に心理、社会的因子が密接に関与する身体疾患を言うが、神経症やうつ病など他の精神障害を伴う身体疾患は除外する」とされ、明確に区別されている・・・」とある。  


Posted by 青山拓水 at 14:31Comments(0)年金

2020年02月01日

医療保険一考

 健康保険の自己負担割合は現在原則3割である。高額療養費制度もある。
 生命保険文化センターによると、入院時の自己負担費用(治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品費などを含み、高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額)は平均で1日あたり約2.3万円、1入院あたり約21万円、入院日数の平均は約32日(胃の悪性新生物19.3日、脳血管疾患89.5日、統合失調症等546.1日など、かなり幅がある)となっている。
 また、年齢別の入院人数を見ると、同センターによれば、5歳以降年齢をおって多くなり、10万人あたりの人数で、20代前半165、40代前半で330、50代後半772、60代後半1,350、80代後半5,578などとなっており、高齢になる程人数は急増している。なお、男女間の差もある。
 組合健保の場合、自己負担額が後日給付され、実質負担が軽減されていた時代があった。組合によっては全額給付のところもあった。
 組合健保も財政が厳しくなり、自己負担に対する給付も減らされ、自己負担額が1万円超とか2万円超の部分だけが給付されるようになってきているようだ。
 そこで、自己負担額が多くなる入院の場合に保険給付を行う医療保険も出てきている。
 数年前、こういう保険の一つが紹介された。少し前の情報なので、今とは多少異なっているだろうが、いただいた当時、説明書で保険効果を計算してみた。ここでいう保険効果というのは、分母を累積保険料、分子を保険給付額として計算される率である。
 この保険は入院日数30日ごとに給付される「入院支援保険金」、1入院について給付される「入院初期費用保険金」、入院1日あたり給付される「見舞金」(疾病入院給付金、災害入院給付金)とからなっている。
 入院支援保険金は2.5万円または5万円、入院初期費用保険金は3万円、見舞金は1日あたり1千円、加入は75歳6ヶ月までである。
 保険料は入院支援保険金の額と年齢で決まっており、2.5万円だと21〜25歳で月649円、56〜60歳で月1,670円、75歳で4,505円などとなっていた。
 例えば、55歳から加入し、56歳から64歳までに30日入院1回、65歳から70歳までに同じ30日入院をもう1回、71歳から75歳までにさらに1回、計3回の30日入院をした場合、保険効果は入院支援保険金2.5万円の場合、56歳で555.12%、以後徐々に下がり、59歳で112.68%、64歳で41.72%、75歳で36.76%となった。入院支援保険金5万円だと、55歳で488.63%、59歳で99.68%、64歳で36.93%、75歳で32.49%となった(下図参照)。
 加入初期に入院した場合は黒字が続くが、59歳頃以降は赤字が増していった。
 この保険はかなり早くから加入できる。15歳の保険料は入院支援保険金が2.5万円で月356円、5万円では516円である。15歳から加入し、30日入院を、36歳から55歳、56歳から64歳、65歳から70歳、71歳から75歳の間で各1回した場合を計算すると、保険効果が100%以上となる年はなく、最高でも40%を少し上回る程度となった(下図参照)。
 36歳時の保険料は入院支援保険金2.5万円で745円、5万円では1,085円である。36歳から加入し、30日入院を、36歳から45歳、46歳から55歳、56歳から64歳、65歳から70歳、71歳から75歳で各1回した場合では、当初は200%近くになる年もあるが、逓減していき、最後は50%未満となった(下図参照)。
 以上からいえることは、この保険については、加入初期はともかく、総じて、保険料を貯金に回した方が得ということではないだろうか。年末調整での生命保険料控除や医療費控除による所得税還付があるにしても、である。
 医療保険については、面倒だがこういう作業をしてみることをお勧めしたい。







  


Posted by 青山拓水 at 13:02Comments(0)FP