2020年01月05日

離職理由がパワハラの場合の基本手当

 離職の日以前2年間に雇用保険加入期間が通算12ヶ月以上あると基本手当が支給される。支給期間は加入期間に応じて90日から150日間である。
 基本手当は、離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後において、失業している日が通算して7日に満たない間は、支給されない。この期間を「待期期間」という。
 また、離職理由が自己都合の場合は、この待期期間満了後も、3ヶ月間は基本手当が支給されない。「給付制限」といわれる。
 ただし、倒産や解雇など離職の理由によっては、離職の日以前1年間に雇用保険加入期間が通算6ヶ月以上あれば基本手当が支給され、待期期間はあるものの給付制限はなく、また支給期間も長くなる。
 これに該当する人を、特定受給資格者・特定理由離職者という。
 特定受給資格者と認められる離職理由にパワハラがある。該当すると給付制限はなく給付期間も長くなる。
 適用されるのKiwateは、「事業主又は当該事業主に雇用される労働者から就業環境が著しく害されるような言動を受けたこと」で、「上司、同僚等の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせに「故意」がある」と認められる場合である。
ただし、「管理者が、部下の職務上の失態、勤務態度又は勤務成績等に不満がある場合、注意、叱責することは通常起こり得ることであるから、そのことだけをもっては、当該基準に該当しない」とされている。
 パワハラについては人によって内容にかなりの幅があるが、パワハラによって特定受給資格者となるかかどうかはハローワークが決定する。思い当たるところがあれば詳しく相談することが大切である。
 参照した関係法令等
 * 雇用保険法13条・21条・22条・23条・33条
 * 雇用保険法施行規則19条の2
 * 雇用保険に関する業務取扱要領(令和元年10月1日以降)50305(5)特定受給資格者の範囲・50309 (9) 特定理由離職者及び特定受給資格者に係る暫定措置等の整理・52203(3)「正当な理由がない自己の都合による退職」として給付制限を行う場合の認定基準・52205(5)法第33条の給付制限期間  


Posted by 青山拓水 at 20:28Comments(0)雇用保険

2019年05月04日

働くときの公的保険【1】雇用保険<06>

 離職理由等による給付制限

 雇用保険の基本手当には、離職理由による給付制限というものがある。
 なお、雇用保険法21条では、「基本手当は、受給資格者が当該基本手当の受給資格に係る離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後において、失業している日(疾病又は負傷のため職業に就くことができない日を含む。)が通算して七日に満たない間は、支給しない。」とあり、離職理由に関係なく7日間の待期期間というものがある。

 給付制限は、この待期期間が過ぎてもまだ支給が制限される期間のことである。

 同法32条1項は、「受給資格者・・・が、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと又は公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けることを拒んだときは、その拒んだ日から起算して一箇月間は、基本手当を支給しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。」としている。
 そして、【次の各号】には、拒んだことに正当な理由がて認められる場合として、「紹介された職業又は公共職業訓練等を受けることを指示された職種が、受給資格者の能力からみて不適当であると認められるとき。」などいくつかが列挙されている。

 また、同法33条1項では、「被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合には、第二十一条の規定による期間の満了後一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない。」
 但し書きがあり、「ただし、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける期間・・・については、この限りでない。」となっている。
 ここでは【一箇月以上三箇月以内】となっているが、(*1)の【Q5】を見ると、この場合の給付制限期間は3か月間である。

 さらに、同法34条1項では、「偽りその他不正の行為により求職者給付又は就職促進給付の支給を受け、又は受けようとした者には、これらの給付の支給を受け、又は受けようとした日以後、基本手当を支給しない。」とあり、続いて、「ただし、やむを得ない理由がある場合には、基本手当の全部又は一部を支給することができる。」となっている。
 いずれの条文も2項以降があり、細かな規定があるが、(*1)の【Q5】で簡潔に説明されている。

 なお、離職理由について「事業主と離職者で主張が食い違った場合」について、(*1)の【Q6】で説明されている。
 これを見ると、「・・・最終的に当該本人の住居所を管轄する公共職業安定所において慎重に判定することになっています。事業主一方の主張のみで判定することはありません。」とある。疑問があれば、ハローワークに出向いてきちんと主張していくべきである。

(*1)https://www.hellowork.go.jp/member/unemp_question02.html
  


Posted by 青山拓水 at 19:30Comments(0)雇用保険

2019年04月30日

働くときの公的保険【1】雇用保険<05>

 雇用保険の離職票について。

 退職理由の傾向については、大雑把だが、厚生労働省「平成30年就労条件総合調査の概況(第22表)」(*1)によると、退職理由が会社都合5.4%、自己都合22.8%などとなっている(平成29年1年間における勤続20年以上かつ45歳以上の退職者がいた企業についての割合)。

 特定受給資格者や特定理由離職者で分かるように、離職理由によって所定給付日数が異なっており、離職理由は基本手当の受給額を決める重要な要素になっている。
 
 労働者が雇用保険の被保険者でなくなると、事業主は10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」に「雇用保険被保険者離職証明書」等の書類を添えてハローワークに提出しなければならない(雇用保険法施行規則7条1項)。
 離職証明書には、離職理由について細かに分類されたページがあり、事業主が該当箇所に印をつけるようになっていて、これで離職の具体的理由が指定される。このページの下の方に、離職者がこれについて異議の有無等を記入する欄がある。

 「離職理由の判断手続きの流れ」(*2)を見ると、離職証明書の提出を受けたハローワークは「離職票−2」を事業主に交付し、事業主はその「離職票−2」を離職者に交付、離職者はこれを自己の住所地管轄のハローワークに提出して求職の申し込みをし、受給資格の決定を受けることとなっている。
 以上の各書類の様式は、雇用保険法施行規則の末尾に示されている(例えば、雇用保険被保険者資格喪失届は様式第四号)。
 手続きの概要は(*3)で離職者側の立場からもう少し詳しく示されている。

 なお、雇用保険法施行規則19条1項では、「基本手当の支給を受けようとする者・・・は、管轄公共職業安定所に出頭し、離職票に運転免許証その他の基本手当の支給を受けようとする者が本人であることを確認することができる書類(当該基本手当の支給を受けようとする者が離職票に記載された離職の理由に関し異議がある場合にあつては、当該書類及び離職の理由を証明することができる書類)を添えて提出しなければならない・・・。」としている。
 つまり、記載されている離職理由について異議がある場合は、そのことを証する書類を用意する必要がある。
 
 基本手当受給に必要な離職票がなかなか離職票が届かないということがあるが、この流れがどこかで滞っているということである。
 雇用保険法施行規則7条2項を見ると、「事業主は、前項の規定により当該資格喪失届を提出する際に当該被保険者が雇用保険被保険者離職票(様式第六号。以下「離職票」という。)の交付を希望しないときは、同項後段の規定にかかわらず、離職証明書を添えないことができる。ただし、離職の日において五十九歳以上である被保険者については、この限りでない。」となっている。59歳未満なら離職票が必要かどうかおそらく聞かれると思われるが(例えば、すでに転職先が決まっていれば不要であろうから)、その時に交付を求める意思表示が伝わっていないことがあるかもしれない。会社の手続きが進んでいない理由はその他にもあるかもしれない。単なる失念、事務の停滞など。
 雇用保険法83条は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金の対象を列挙していて、4項は「第七十六条第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して証明書の交付を拒んだ場合」としている。
 そして、第七十六条第三項は「離職した者は、厚生労働省令で定めるところにより、従前の事業主・・・に対して、求職者給付の支給を受けるために必要な証明書の交付を請求することができる。その請求があつたときは、当該事業主・・・は、その請求に係る証明書を交付しなければならない。」となっている。使わないにこしたことはないが、こういう条項があることは知っておいてよいだろう。
 離職票がなかなか来ない時は、会社やハローワークに問い合わせて早めに解決したい。
 
(*1)https://www.mhlw.go.jp/…/rou…/jikan/syurou/18/dl/gaikyou.pdf
(*2)https://www.hellowork.go.jp/ins…/insurance_basicbenefit.html
(*3)https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_guide.html  


Posted by 青山拓水 at 13:34Comments(0)雇用保険

2019年04月20日

働くときの公的保険【1】雇用保険<04>

 雇用保険の基本手当の所定給付日数について。
 基本手当の給付額は基本手当日額と所定給付日数で決まる。
 基本手当日額は賃金日額をもとに計算する(雇用保険<03>参照)。
 所定給付日数は雇用保険の被保険者として働いていた期間と離職理由によって定められている(*1)。
 ここの表を見ると、特定受給資格者に該当すると、被保険者として働いた期間が20年以上ある場合は所定給付日数は年齢区分によって240日から330日などとなっている。特定受給資格者は、主に倒産、解雇等(パワハラ、セクハラによる退職も含まれている)により離職を余儀なくされた人である。
 特定理由離職者は、(1)有期労働契約で更新がされなかった場合(雇い止めされた場合)と、(2)倒産や解雇以外でもやむなく離職したと認められる場合が挙げられており、(1)の場合は所定給付日数が特定受給資格者と同様となる。
 就職困難者(*2のQ4参照)の場合は被保険者期間が1年以上で300日あるいは360日などとされている。
 通常の自己都合退職などで以上に該当しない場合は、被保険者期間が20年以上あっても所定給付日数は年齢にかかわらず一律150日である。
 ただし、重要なことがある。受給要件(*3)である。そもそもこれに該当しないと基本手当を受けることはできない(雇用保険<03>参照)。それは、(1)労働の意思及び能力があること、(2)被保険者期間要件の二つである。
 受給要件の(2)は、「離職の日以前2年間に、被保険者期間(※補足2)が通算して12か月以上あること。ただし、特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。」となっている(*3)
(*1)https://www.hellowork.go.jp/insu…/insurance_benefitdays.html
(*2)https://www.hellowork.go.jp/member/unemp_question02.html
(*3)https://www.hellowork.go.jp/ins…/insurance_basicbenefit.html  


Posted by 青山拓水 at 21:26Comments(0)雇用保険

2019年03月31日

働くときの公的保険【1】雇用保険<03>

 雇用保険の代名詞といえる基本手当の概要を記す。
 雇用保険法(以下単に「法」という)13条に「基本手当は、被保険者が失業した場合において、・・・支給する。」とあるように、基本手当の支給要件の第一は「失業」である。基本手当がしばしば失業保険とか失業手当といわれる所以である。
 失業というのは職を失うことを指すことが多いが、法では、失業について4条3項で次のように定めている。「この法律において「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。」
 「失業」とよく似た言葉で「離職」というのがあるが、「離職」について、法は4条2項で「この法律において「離職」とは、被保険者について、事業主との雇用関係が終了することをいう。」としている。
 以上のことから、法における「失業」というのは(1)被保険者であること+(2)離職+(3)労働の意思及び能力+(4)職業に就くことができないという4要件で成り立っていることが分かる。なお、(3)の労働の意思及び能力は「労働の意思」と「労働の能力」に分けることができるので、要件は5つということもできる。
 要件のうち労働の意思及び能力については、ハローワークのサイトで、次のように説明されている(*1)。

 次のような状態にあるときは、基本手当を受けることができません。
・病気やけがのため、すぐには就職できないとき
・妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
・定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
・結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき

 このうち、「定年などで・・・休養しようと思っているとき」は労働の意思がない場合であり、その他は労働の能力に欠ける場合である。

基本手当には受給期間と受給額が定められている。
 受給期間は離職理由等によって異なっている。(これについては次回)
 受給額は基本手当日額と離職時の年齢によって算出される。
 基本手当日額は賃金日額をもとに計算する。賃金日額は離職前6ヶ月間の給料の合計を180で割って出す。これについて、ハローワークのサイト(*1)では、「基本手当日額は原則として離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(つまり、賞与等は除きます。)の合計を180で割って算出した金額(これを「賃金日額」といいます。)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)……」と記載されている。
 賃金日額については上限額と下限額があり、「毎月勤労統計」の平均定期給与額の 増減により、毎年8月1日にその額が変更される(*2)。なお、毎月勤労統計に問題があって追加支給がされている(*3)のは周知のとおりである。
・(*1)https://www.hellowork.go.jp/ins…/insurance_basicbenefit.html
・(*2)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000334236.pdf
・(*3)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03463.html  


Posted by 青山拓水 at 19:06Comments(0)雇用保険

2019年03月24日

働くときの公的保険【1】雇用保険<02>

 厚生労働省のサイトに「労働統計要覧」というページがある。「J 社会保障」(*1)というところを見ると、平成27年度なので最新のものではないが、厚生年金保険の適用事業所数は1,970,258ヶ所、被保険者は36,864千人となっている。雇用保険はどうかというと、一般被保険者については、同年度で適用事業所数は2,139千ヶ所、被保険者は40,861千人である。厚生年金保険より雇用保険の方が多い。率にして約1.1倍である。
 厚生年金保険の加入対象者は、政府広報オンライン(*2)によると、所定労働時間が「週30時間以上」又は「週20時間以上かつ月額賃金8.8万円等の一定の要件を満たす」人となっている。雇用保険の加入対象者は、厚労省のサイト(*3)によると、雇用期間が31日以上かつ1週間の所定労働時間が 20 時間以上などとなっている。
 これから見ると、雇用保険の方が加入のハードルが低いことで、加入者が多いと見ることができる。
 雇用保険の代表的な給付である基本手当(失業した場合の手当)を受けた人は、平成27年度で「初回受給者」が1,215,502人、「受給者実人員」が435,563人となっている。先に見た一般被保険者の総数に対し、初回受給者で約3%、実人員で約1%の割合となる。失業のリスクはこのくらいある、という理解もできる。
 「初回受給者」と「受給者実人員」については用語の説明(*4)によると、「初回受給者」は、同一受給期間内における基本手当等の第1回目の支給を受けた者又は雇用継続給付の第1回目の支給を受けた者の数、「受給者実人員」は、同月内に求職者給付(高年齢求職者給付金及び特例一時金を除く。)又は就職促進給付(就業手当のみ)を受けた受給資格者の実数、となっている。年間で複数回失業をすると、1年間に第1回受給者として同じ人が複数回計上されることもあり得るので、2種類の数字が上がっているのであろうか。
 なお、同年度の基本手当の支給総額は624,543百万円となっており、初回受給者数で割ると51万円余となる。
 厚労省のサイト(*3)には、「労働者を一人でも雇っていれば、雇用保険の加入手続が必要・・・」「パートタイム労働者も一定の基準に該当すれば、雇用保険の加入手続が必要・・・」とあり、パートやアルバイトでも加入対象となっていることが少なくない。雇用保険法第7条は事業主の被保険者に関する届出義務を定めており、同法第83条は届出をしなかった場合の罰則(六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金)を定めている。
 雇用保険の給付には基本手当の他にも育児・介護休業給付や教育訓練給付等様々な給付がある。加入できる条件なのに入っていない、ということがないようにしたい。入っているかどうかは給与明細書を見て、雇用保険料が引かれているかどうかでも分かる。不明なことがあれば最寄のハローワークに聞いて、不安を解消するようにしたい。
* (*1)https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyr_j.html
* (*2)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201607/2.html
* (*3)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html
* (*4)https://www.mhlw.go.jp/toukei/dl/yougo.pdf  


Posted by 青山拓水 at 19:50Comments(0)雇用保険

2019年02月28日

働くときの公的保険【1】雇用保険<01>

 雇用保険は、失業した場合や働き続けることが困難となった場合、そして一定の教育訓練を受けた場合に給付を受けることができる。働く人にとって失業は大きなリスクである。雇用保険は働くことに伴う様々なリスクをカバーする、必要かつ大切な保険である。
 平成30年度の保険料は給料の0.3%、例えば総支給額30万円なら900円、負担は低く抑えられている。公的保険ならではの保険料といえる。全ての労働者が加入対象ではないが、公的保険であり加入のハードルは低く設定されている。なお、雇用保険料は労働者負担分に加えて事業主の負担分もあり、その率は0.6%。労働者の倍になっている。上の例でいえば、事業主は給料から差し引いた900円と、事業主負担分の1,800円の合計2,700円を国に納付する。
 雇用保険に入ると雇用保険被保険者証が発行される。ただし、加入手続は会社が行い、被保険者証も会社が保管していることもあって、個々の労働者は加入の事実さえ自覚していないこともあるようだ。ただし、加入しているかどうかは、会社に確かめなくても、給与から保険料が引かれているかどうかでわかる。給与明細書には、雇用保険加入の証拠以外にもいろいろな情報が載っている。大切に保管しておきたい。
  


Posted by 青山拓水 at 17:55Comments(0)雇用保険