2019年03月31日
働くときの公的保険【1】雇用保険<03>
雇用保険の代名詞といえる基本手当の概要を記す。
雇用保険法(以下単に「法」という)13条に「基本手当は、被保険者が失業した場合において、・・・支給する。」とあるように、基本手当の支給要件の第一は「失業」である。基本手当がしばしば失業保険とか失業手当といわれる所以である。
失業というのは職を失うことを指すことが多いが、法では、失業について4条3項で次のように定めている。「この法律において「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。」
「失業」とよく似た言葉で「離職」というのがあるが、「離職」について、法は4条2項で「この法律において「離職」とは、被保険者について、事業主との雇用関係が終了することをいう。」としている。
以上のことから、法における「失業」というのは(1)被保険者であること+(2)離職+(3)労働の意思及び能力+(4)職業に就くことができないという4要件で成り立っていることが分かる。なお、(3)の労働の意思及び能力は「労働の意思」と「労働の能力」に分けることができるので、要件は5つということもできる。
要件のうち労働の意思及び能力については、ハローワークのサイトで、次のように説明されている(*1)。
次のような状態にあるときは、基本手当を受けることができません。
・病気やけがのため、すぐには就職できないとき
・妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
・定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
・結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき
このうち、「定年などで・・・休養しようと思っているとき」は労働の意思がない場合であり、その他は労働の能力に欠ける場合である。
基本手当には受給期間と受給額が定められている。
受給期間は離職理由等によって異なっている。(これについては次回)
受給額は基本手当日額と離職時の年齢によって算出される。
基本手当日額は賃金日額をもとに計算する。賃金日額は離職前6ヶ月間の給料の合計を180で割って出す。これについて、ハローワークのサイト(*1)では、「基本手当日額は原則として離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(つまり、賞与等は除きます。)の合計を180で割って算出した金額(これを「賃金日額」といいます。)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)……」と記載されている。
賃金日額については上限額と下限額があり、「毎月勤労統計」の平均定期給与額の 増減により、毎年8月1日にその額が変更される(*2)。なお、毎月勤労統計に問題があって追加支給がされている(*3)のは周知のとおりである。
・(*1)https://www.hellowork.go.jp/ins…/insurance_basicbenefit.html
・(*2)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000334236.pdf
・(*3)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03463.html
雇用保険法(以下単に「法」という)13条に「基本手当は、被保険者が失業した場合において、・・・支給する。」とあるように、基本手当の支給要件の第一は「失業」である。基本手当がしばしば失業保険とか失業手当といわれる所以である。
失業というのは職を失うことを指すことが多いが、法では、失業について4条3項で次のように定めている。「この法律において「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。」
「失業」とよく似た言葉で「離職」というのがあるが、「離職」について、法は4条2項で「この法律において「離職」とは、被保険者について、事業主との雇用関係が終了することをいう。」としている。
以上のことから、法における「失業」というのは(1)被保険者であること+(2)離職+(3)労働の意思及び能力+(4)職業に就くことができないという4要件で成り立っていることが分かる。なお、(3)の労働の意思及び能力は「労働の意思」と「労働の能力」に分けることができるので、要件は5つということもできる。
要件のうち労働の意思及び能力については、ハローワークのサイトで、次のように説明されている(*1)。
次のような状態にあるときは、基本手当を受けることができません。
・病気やけがのため、すぐには就職できないとき
・妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
・定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
・結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき
このうち、「定年などで・・・休養しようと思っているとき」は労働の意思がない場合であり、その他は労働の能力に欠ける場合である。
基本手当には受給期間と受給額が定められている。
受給期間は離職理由等によって異なっている。(これについては次回)
受給額は基本手当日額と離職時の年齢によって算出される。
基本手当日額は賃金日額をもとに計算する。賃金日額は離職前6ヶ月間の給料の合計を180で割って出す。これについて、ハローワークのサイト(*1)では、「基本手当日額は原則として離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(つまり、賞与等は除きます。)の合計を180で割って算出した金額(これを「賃金日額」といいます。)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)……」と記載されている。
賃金日額については上限額と下限額があり、「毎月勤労統計」の平均定期給与額の 増減により、毎年8月1日にその額が変更される(*2)。なお、毎月勤労統計に問題があって追加支給がされている(*3)のは周知のとおりである。
・(*1)https://www.hellowork.go.jp/ins…/insurance_basicbenefit.html
・(*2)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000334236.pdf
・(*3)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03463.html
2019年03月24日
働くときの公的保険【1】雇用保険<02>
厚生労働省のサイトに「労働統計要覧」というページがある。「J 社会保障」(*1)というところを見ると、平成27年度なので最新のものではないが、厚生年金保険の適用事業所数は1,970,258ヶ所、被保険者は36,864千人となっている。雇用保険はどうかというと、一般被保険者については、同年度で適用事業所数は2,139千ヶ所、被保険者は40,861千人である。厚生年金保険より雇用保険の方が多い。率にして約1.1倍である。
厚生年金保険の加入対象者は、政府広報オンライン(*2)によると、所定労働時間が「週30時間以上」又は「週20時間以上かつ月額賃金8.8万円等の一定の要件を満たす」人となっている。雇用保険の加入対象者は、厚労省のサイト(*3)によると、雇用期間が31日以上かつ1週間の所定労働時間が 20 時間以上などとなっている。
これから見ると、雇用保険の方が加入のハードルが低いことで、加入者が多いと見ることができる。
雇用保険の代表的な給付である基本手当(失業した場合の手当)を受けた人は、平成27年度で「初回受給者」が1,215,502人、「受給者実人員」が435,563人となっている。先に見た一般被保険者の総数に対し、初回受給者で約3%、実人員で約1%の割合となる。失業のリスクはこのくらいある、という理解もできる。
「初回受給者」と「受給者実人員」については用語の説明(*4)によると、「初回受給者」は、同一受給期間内における基本手当等の第1回目の支給を受けた者又は雇用継続給付の第1回目の支給を受けた者の数、「受給者実人員」は、同月内に求職者給付(高年齢求職者給付金及び特例一時金を除く。)又は就職促進給付(就業手当のみ)を受けた受給資格者の実数、となっている。年間で複数回失業をすると、1年間に第1回受給者として同じ人が複数回計上されることもあり得るので、2種類の数字が上がっているのであろうか。
なお、同年度の基本手当の支給総額は624,543百万円となっており、初回受給者数で割ると51万円余となる。
厚労省のサイト(*3)には、「労働者を一人でも雇っていれば、雇用保険の加入手続が必要・・・」「パートタイム労働者も一定の基準に該当すれば、雇用保険の加入手続が必要・・・」とあり、パートやアルバイトでも加入対象となっていることが少なくない。雇用保険法第7条は事業主の被保険者に関する届出義務を定めており、同法第83条は届出をしなかった場合の罰則(六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金)を定めている。
雇用保険の給付には基本手当の他にも育児・介護休業給付や教育訓練給付等様々な給付がある。加入できる条件なのに入っていない、ということがないようにしたい。入っているかどうかは給与明細書を見て、雇用保険料が引かれているかどうかでも分かる。不明なことがあれば最寄のハローワークに聞いて、不安を解消するようにしたい。
* (*1)https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyr_j.html
* (*2)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201607/2.html
* (*3)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html
* (*4)https://www.mhlw.go.jp/toukei/dl/yougo.pdf
厚生年金保険の加入対象者は、政府広報オンライン(*2)によると、所定労働時間が「週30時間以上」又は「週20時間以上かつ月額賃金8.8万円等の一定の要件を満たす」人となっている。雇用保険の加入対象者は、厚労省のサイト(*3)によると、雇用期間が31日以上かつ1週間の所定労働時間が 20 時間以上などとなっている。
これから見ると、雇用保険の方が加入のハードルが低いことで、加入者が多いと見ることができる。
雇用保険の代表的な給付である基本手当(失業した場合の手当)を受けた人は、平成27年度で「初回受給者」が1,215,502人、「受給者実人員」が435,563人となっている。先に見た一般被保険者の総数に対し、初回受給者で約3%、実人員で約1%の割合となる。失業のリスクはこのくらいある、という理解もできる。
「初回受給者」と「受給者実人員」については用語の説明(*4)によると、「初回受給者」は、同一受給期間内における基本手当等の第1回目の支給を受けた者又は雇用継続給付の第1回目の支給を受けた者の数、「受給者実人員」は、同月内に求職者給付(高年齢求職者給付金及び特例一時金を除く。)又は就職促進給付(就業手当のみ)を受けた受給資格者の実数、となっている。年間で複数回失業をすると、1年間に第1回受給者として同じ人が複数回計上されることもあり得るので、2種類の数字が上がっているのであろうか。
なお、同年度の基本手当の支給総額は624,543百万円となっており、初回受給者数で割ると51万円余となる。
厚労省のサイト(*3)には、「労働者を一人でも雇っていれば、雇用保険の加入手続が必要・・・」「パートタイム労働者も一定の基準に該当すれば、雇用保険の加入手続が必要・・・」とあり、パートやアルバイトでも加入対象となっていることが少なくない。雇用保険法第7条は事業主の被保険者に関する届出義務を定めており、同法第83条は届出をしなかった場合の罰則(六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金)を定めている。
雇用保険の給付には基本手当の他にも育児・介護休業給付や教育訓練給付等様々な給付がある。加入できる条件なのに入っていない、ということがないようにしたい。入っているかどうかは給与明細書を見て、雇用保険料が引かれているかどうかでも分かる。不明なことがあれば最寄のハローワークに聞いて、不安を解消するようにしたい。
* (*1)https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyr_j.html
* (*2)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201607/2.html
* (*3)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html
* (*4)https://www.mhlw.go.jp/toukei/dl/yougo.pdf