2019年07月27日

「新聞記者」

 「新聞記者」が話題になっていると知り、1週間ほど前近くの映画館で観た。望月記者や元文部科学省事務次官の前川喜平氏なども出ていて、こういう作りもあるのか、面白い、生物化学兵器はかなりの飛躍で、これらを除けば報道されてきた経緯とよく似た筋ではあったが、神埼氏の自死の理由が納得がいかなかった。
 資料を新聞社に送信したことは守秘義務違反で懲戒処分の対象となることは確実で、免職となれば退職金も無くなるだろうが(遺族年金は出るはず)、処分理由の公表をどのようにするのか、という問題はある。すると処分は難しいと考え、口を閉ざす方法を内調は考えたのだろうか。しかし、生物化学兵器の開発を目論んでいるということを知り得たとしても、そのことが自死につながる理由として映画では描かれていたと思うのだが、それは理由としては弱すぎると私には思われた。
 吉岡記者(シム・ウンギョン)と並んで、編集責任者の北村有起哉、悪役の多田を演じる田中哲司も中々良かった。
 杉原(松坂桃李)は、あれほど懸命に、まさに職を賭して事実を報道機関に提供したのに、最後は生まれたばかりの我が子と妻を選んだ。そういう展開もありなのだ。だが、多田は本当にそれまでの杉原の行動を不問に付すことにしたのか、杉原(そして観ている私)はそれを推測するほかはなかったが、保身できるとみて、そちらを選んだのだろう。際どい判断ではあった。
 守秘義務違反に対しては、公益通報者保護法の適用があれば堂々とやれるのだが、と、観終わって調べてみたが、本作における政府の生物化学兵器の研究・製造が同法でいう「人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として別表に掲げるもの・・・に規定する罪の犯罪行為の事実」などに当たるとは考えがたく、やはり服務規律違反は動かせない。
 一見そうではあるのだが、適用が可能な余地があるのだ、と描く部分があればもっと深まったと思うが、そもそも難しい話である。
 内部通報で企業の不祥事が明るみに出る事件は時折あるが、同法で保護される事案もあると見受けられる。しかし、本作の場合は懲戒免職は免れないであろう。刑事罰はあるのだろうか。
 あとで調べたら、国家公務員法100条と106条の12に秘密保持義務の規定があり、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金を定めた109条12号に、「第百条第一項若しくは第二項又は第百六条の十二第一項の規定に違反して秘密を漏らした者」とあった。ただし、逮捕起訴したとして、何の秘密を漏らしたのかが出ずにすむのかどうか、という問題は残る。
 真実を伝えるのが報道機関の使命、これが民主主義、自由主義の根幹である。ところが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法)の報道でもわかるように、損失しか記事にしないなど、報道機関自体に問題があるのも事実。悪いことしか扱わない傾向があるようだ。
 自分で考えることが肝要。報道を鵜呑みにしてはいけない。ということなのだが、見聞を広めるのも大変だし、自由と民主主義を守るのは容易ではない。


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Posted by 青山拓水 at 18:29│Comments(0)ひねもす
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